オーロラはティアを裏口から外に連れ出し、自動車部品が散らばった芝の上を横切っていく。
ふたりは半分つぶれかかった車の裏にしゃがみこみ、それから家の方を伺い見る。
ティア
ティア
なんでハーリーおじいちゃんは来ないの?
オーロラ
オーロラ
あの人たちはトラックが駐車してあるのを見たはずだから、家にいるのはばれているわ。
オーロラ
オーロラ
おじいちゃんが逃げれば、追い掛けてくるでしょう。
ティア
ティア
警察を呼ばないと。
彼女は電話を手にしたが、オーロラが彼女の手をつかむ。
オーロラ
オーロラ
ザカリーの話を聞いたでしょ。
オーロラ
オーロラ
あの人たちの手下なの。
オーロラ
オーロラ
やらされたとはいえ、彼がやったの。
オーロラ
オーロラ
あの人たちが捕まったら、ザカリーも困るわ。
ティア
ティア
どうでもいい!もしあの人たちがキーランを殺したんなら―
オーロラ
オーロラ
魂からのメッセージじゃなくて、私たちの話を信じてもらえるような証拠が必要よ。
オーロラ
オーロラ
ザカリーにが正しいことをしてくれれば―
家の方から叫び声が聞こえて、彼女は言葉を止める。
ほとんど聞き取れないが、祖父ハーリーの怒鳴り声がふたりに聞こえた。
「俺の孫だぞ!」
オーロラ
オーロラ
ザカリーが―
彼女は立ち上がり、ドアの方に歩き始める。
ティアは彼女の手をつかみ引き戻す。
そして家の方から、弾けるような音が2回聞こえる。
オーロラは息をのんで再び歩き出そうとするが、ティアが彼女の腕をしっかりつかむ。
ティア
ティア
どうするつもりですか?
ティア
ティア
あっちに行って、あの人たちが銃を持ってたら、何もできないじゃないですか?
オーロラが何か言おうとした時に、裏口のドアが開く。
見知らぬが大股で歩いて出てきて、ふたりは頭を低くする。
男は素早く回りに目をやると、庭の端にある大きな納屋に向かう。
ふたりは車を回り込むようにして、様子を覗く。
納屋から男がガソリンの缶をふたつ手にして出てくるのが見える。
オーロラ
オーロラ
どうなってるのかしら。
ティアがメールを打ち始める。
ティア
ティア
キーラン、何か見える?何が起きてる?
ティア
ティア
ハーリーおじいちゃんは大丈夫?
キーラン
キーラン
動かないで、静かにしていて。いい状況じゃない。
ティア
ティア
おじいちゃんを殺したの?
キーラン
キーラン
少なくとも、あっという間だった。おじいちゃんには。
キーラン
キーラン
奴ら、ガソリンをまき散らしてる。
キーラン
キーラン
家を焼くつもりなんだと思う。
ティアはオーロラの方を向く。
ティア
ティア
携帯を持ってきてますか?警察を呼ぶだけ呼んでみましょう。
その結果どうなるか理解し、オーロラの顔がゆがむ。
それでも彼女は電話をかけ始める。
ティアがメールを続ける背後で、彼女は警察に話をする。
ティア
ティア
あの人たち何やってる?まだいるの?
キーラン
キーラン
おじいちゃんを―死体を―引きずって家の外に出そうとしてる。
キーラン
キーラン
トラックの後部にのせている。
キーラン
キーラン
どこかに持ってって処分するつもりだろう。
キーラン
キーラン
証拠隠滅に家を焼くけど
キーラン
キーラン
死体は焼くだけじゃだめなんだろう。
ティア
ティア
まさか!同じ場所に持っていくんでしょう?
ティア
ティア
お兄ちゃんと同じ場所に。
ティア
ティア
あの人たちについて行けば、お兄ちゃんの―お兄ちゃんを、見つけられる。
キーラン
キーラン
そうだね。僕の死体が見つかるね。
キーラン
キーラン
でも危なすぎる。警察に任せよう。
ティア
ティア
警察がここに到着するまでに、あの人たちは何をする?
ティア
ティア
私たちは、あの人たちが何者か説明できないじゃない!
ティア
ティア
どこに行こうとしてるのかも!
ティア
ティア
もし今追っかけなかったら、警察は見つけられないでしょう?あの人たちを―それかお兄ちゃんを。
キーラン
キーラン
それはどうでもいいよ。
キーラン
キーラン
母さんと父さんはすでに一人子供を失ってるから―もうひとりも失うわけにはいかない。隠れてろ。
ティア
ティア
私とどれくらい離れていられる?
ティア
ティア
あの人たちについて行って、どこに行ったか私たちに教えてくれる?
キーラン
キーラン
それはできないと思う。
キーラン
キーラン
感じる、ハーリーおじいちゃんの気配を感じる、なんとなく。
キーラン
キーラン
でもすごく混乱してて、怒ってる。
キーラン
キーラン
僕自身を奪っていく、あの悪い感情でいっぱいになってる。
キーラン
キーラン
追うのは嫌だな。追うべきじゃないと思う。
ティア
ティア
OK。私のそばにいて。で、私が安全な距離をとってついていくから。
キーラン
キーラン
安全な距離なんかない。
しかしティアは彼の言うことを聞かない。まだ電話中のオーロラの方を向く。
ティア
ティア
あの人たち、ハーリーおじいちゃんを―残念だけど―おじいちゃんの遺体を運ぼうとしている。
ティア
ティア
遺体をどこかに持っていくところ。
ティア
ティア
私がついていって、どこに行くか確認してくる。あなたはここにいて―
オーロラ
オーロラ
じっとしていられないわ。
彼女はまだ涙を流し、目はショックで大きく開かれている。
しかし声は安定している。
彼女は、彼女の奥底にある強さを引き出している。
長くは続かないかもしれないが、少なくともしばらくは、彼女は自分をコントロールすることができる。
オーロラ
オーロラ
彼の魂は体とつながったまま。
オーロラ
オーロラ
こんなひどい死に方をした場合は、あちらへ渡るのに助けが必要なの。
オーロラ
オーロラ
私なら彼を助けられるわ。
ティア
ティア
でもあの男たちは危険です。
オーロラ
オーロラ
あなたの車で行きましょう。
オーロラ
オーロラ
運転してくれる?私は警察との連絡を続けて、向かってる場所を伝えるから。
ティアの電話が鳴る。
キーラン
キーラン
今なら大変さがわかるだろ?自分の話を聞いてくれないひとに話すの。
ティア
ティア
今でも私が規則を守ってリスクをおかさない人間だと思ってる?
キーラン
キーラン
あえてやることじゃないよ、T!
ティア
ティア
あえてやってるわけじゃない、やるべきことをやっているだけ。
ティア
ティア
オーロラ、行きましょう。
ふたりは車のボンネットにそってゆっくり進み、車寄せに向かう。
ふたりは積み上げられたタイヤの影から、見知らぬ人が運転する、祖父ハーリーのトラックがバックで出てくるのを見ている。
もうひとりの男がしゃがみこみ、ライター握り地面に近づける。
ガソリンが染みた地面に沿って、炎が家へと立ち上がる。
男は火が付くのを確認するまで、しばらく見ている。
それから黒のSUVまで駆け寄り、車を急発進させる。
ティア
ティア
あの人たちが別行動をとるなら、トラックを追い掛けましょう。
オーロラ
オーロラ
そうね、ザカリーについていきましょう。
ふたりはティアのカーに飛び乗り、ピックアップトラックに続いて出発する。
ティア
ティア