フォクシー
フォクシー
ブレイドは、本当に私たちを新参の提供者のところに連れて行くと思う?
リン
リン
どうすべき分かっている人間だったら、連れていくはず。
フォクシー
フォクシー
罠かも。
リン
リン
だとしたら、ヤツはあの世行きね。
フォクシーが笑うと、舌ピアスがキラッと光った。
リンは携帯を取り出すし、メールを打ち始める。
リン
リン
そこにいる?
ルビー
ルビー
大丈夫なのね、よかった。心配になってきたところ。
リン
リン
ごめん、忙しくて。
リン
リン
地元でラプチャーを売ってる売人のひとりを痛めつけてたところ。
リン
リン
ヤツがライバルのギャングの提供者のところに、私たちを連れてくって。
ルビー
ルビー
いい方向に向かってるわね。
ルビー
ルビー
願わくば、ホンジュラスの提供者までつながるといいけど。
リン
リン
確かに。この機会を待っていたのよ。感じるの。
ルビー
ルビー
そうね。でもヤツらは闘う前から情報を差し出さないはず。
ルビー
ルビー
応援要員は必要?
ルビー
ルビー
あなたの座標を追跡してるの。
リン
リン
今はいいけど、必要になるかも。成り行き次第ね。
リン
リン
応援が必要になった場合、どれくらいでここに来れる?
ルビー
ルビー
今事務所じゃないの。子供がまた病気で。でもチームには必ず待機させるわ。
リン
リン
やだ、病気なの?
ルビー
ルビー
託児所って、ご存知のとおり、細菌の培養所だから。
ルビー
ルビー
でも大丈夫。息子を毛布でくるんで、漫画を見てる。
リン
リン
目的地に近づいてるわ。私の場所わかった?
ルビー
ルビー
見つけた。気を付けて。
リン
リン
うん。
リンは携帯をポケットに滑り込ませる。
フォクシーは車を暗い路地の横で縦列駐車する。
ふたりとも車から降り、路地に近づいていく。
リン
リン
なんか嫌な予感がする。
フォクシー
フォクシー
私も。本当にここで合ってる?
リン
リン
ここがブレイドが言っていた待ち合わせ場所。
リン
リン
信用できる人間じゃないけどね。
フォクシー
フォクシー
全く。隣にフォックスがいてよかったね。
リン
リン
ところで、どうしてその名前が付いたの?
フォクシー
フォクシー
フォックス、狐はずる賢い動物で。
フォクシー
フォクシー
ハンターの目をはぐらかすのが得意。
フォクシーがナイフを取り出す。
フォクシー
フォクシー
そしてルールを守らない。
リンがフォクシーの手に目をやる。
リン
リン
その指輪、落ち着かないわ。
フォクシー
フォクシー
私はつけてるわよ。
フォクシー
フォクシー
自分が誰だか、なぜ安心しすぎちゃいけないか、思い出すことができる。
リン
リン
どういうこと?
フォクシー
フォクシー
私が2歳の時に父親が出て行った。
フォクシー
フォクシー
あと母は...私よりドラッグが大事だった。
フォクシー
フォクシー
そして、ある日突然いなくなったの。
フォクシー
フォクシー
私は子供なりに、自力で生きていくしかなくなった。
リン
リン
大変だったのね―ひどい話。
フォクシーが肩をすくめる。
フォクシー
フォクシー
生きていくためにやるべきことをやったわ。
フォクシー
フォクシー
それから、ある男が現れたの。
フォクシー
フォクシー
信頼するなら、何でもしてくれると約束した。
フォクシーが手を上げる。
フォクシー
フォクシー
しばらくの間は、そのとおりだった。
リン
リン
しばらく?
フォクシー
フォクシー
彼のくれるものには、すべて代償があった。
フォクシー
フォクシー
最終的には、役立たずの両親を全く変わらないと気付いた。
フォクシー
フォクシー
この指輪は、間違った人を信じるとどうなるか、思い出すためにつけているの。
リン
リン
だったらその指輪はとっておくべきね。
フォクシー
フォクシー
なんで?
リン
リン
そんなに大事なものだとは知らなかった。とっておいて。
フォクシー
フォクシー
そうしたら、賭けるものがなくなる。
リン
リン
ナイフをもらうわ。
フォクシー
フォクシー
私の幸運のナイフ?
リン
リン
そう。お別れの心づもりをしておいて。
フォクシーがニコリと笑う。
フォクシー
フォクシー
決まりね。
女たちは路地をのぞき込んで、ブレイドが二人の見知らぬ人と話しているのを見る。
フォクシーはリンを見つめ、彼女のささやく声が夜の闇に消える。
フォクシー
フォクシー
3対2。
リン
リン
お安いご用よね?
フォクシーがうなずく。
フォクシー
フォクシー
やるわよ。
フォクシーとリンが路地に突入し、男たちが驚く。
フォクシーがブレイドを刺し、ブレイドはしゃがれたうめき声をあげながら地面に倒れる。
その間、リンはもうひとりの男の顔を蹴る。
蹴られた勢いで彼の体は回り、数秒間ふらふらとし…
地面に崩れ落ちる。
そして3人目がフォクシーを追い掛ける...
リン
リン
気を付けて!
男はフォクシーに向かって突進する。
リンが、男がフォクシーを捕まえるより先に男にタックルし、地面に倒す。
リン
リン
一体...
ドレイク
ドレイク
どうして。
リンが小声で口早にささやく。
リン
リン
ここで何やってんの?
ドレイク
ドレイク
こっちが聞きたい。
ドレイクは立ち上がり、中途半端に殴り掛かる。
リンは軽々とパンチをよける。
フォクシー
フォクシー
彼はまかせて!
フォクシーはドレイクの背中にキックした。
彼はよろめきながら逃げて行くが、フォクシーが追いかける。
彼女は振り返りながら叫ぶ。
フォクシー
フォクシー
アイツはまかせて。他のヤツをよろしく。
リンはドレイクから目を離せない。
フォクシーが目を細め、リンの後ろを指さす。
フォクシー
フォクシー
突っ立ってないで。ひとり逃げるようとしてる。
リンはギャングのひとり追いかけるが、まだドレイクのことが頭から離れない。
嘘をつかれた!研修中だって言ってたのに。
ドレイクは寝返った?
もっと悪ければ―汚職?
リンは頭の中の考えを追い払い、ドレイクの仲間の最後の男を片付ける。
それから彼女が振り返ると、ドレイクがフォクシーに膝蹴りをしているところ。
フォクシーはナイフを落とし、地面に倒れる。
リンは急いで路地に戻り、フォクシーが負傷をする前にドレイクにタックルした。
フォクシー
フォクシー
彼を片付けて、リン!こっちはブレイドを仕留める。
フォクシー
フォクシー
彼は出血がひどいから、簡単に殺せるわ。
リン
リン
ちょっと待って―ブレイドは殺さないはずよ。
フォクシー
フォクシー
状況が変わったの。
フォクシーは影に向かって急ぐ。
リンはドレイクと取っ組み合いになる。ドレイクがリンを地面に押さえつける。
リン
リン
この嘘つき。最低。
ドレイク
ドレイク
嘘つき?俺を嘘つき呼ばわりするのか?
二人は転がり続け、リンが上になる。
リン
リン
そうよ、裏切り者!
リン
リン
ヤツらから何を持ち掛けられたの?
リンは殴ろうとしたが、ドレイクが大きな拳で受け止める。
ドレイク
ドレイク
一体何を言ってる?
ドレイク
ドレイク
寝返ったのはそっちだろう。俺じゃない。
リン
リン
エージェンシーが人生だって言ったじゃない。
リン
リン
よくこんな裏切りができたわね。
ドレイク
ドレイク
裏切ってない―
リン
リン
よく私を裏切ったわね!
リンは拳を後ろに振り上げ、殴ろうとする。
ドレイクが彼女の指を強く握り、リンは痛みで叫ぶ。
ドレイク
ドレイク
?黙って話を聞けよ。
ドレイクが再度彼女を地面に押し付ける。
リン
リン
聞くわよ―あなたは絶対話さないけど。
ドレイク
ドレイク
今話すところだ。
リン
リン
そうなの?
リン
リン
だったら、どうしてそんなろくでなしになったのか教えてよ。
リンはドレイクから離れ、素早く立ち上がる。
リン
リン
それと、なんで私の人生の邪魔ばかりするの。
ドレイク
ドレイク
邪魔?
ドレイク
ドレイク
助けようとしてるんだ。
リンはドレイクに向かって腕を振るが、彼の顎をぎりぎりでかすめる。
リン
リン
前にも言ったけど―自分の面倒は見れる。
ドレイク
ドレイク
見れないなんて一度も言ってない。
リンがもう一度腕を振り、今度は命中する。
リン
リン
任務の度に子守なんて必要ない。
ドレイクが顎に手をやる。
ドレイク
ドレイク
その自尊心を一分でいいから忘れてくれたら、気付くはず―
フォクシーが影から姿を現す。
フォクシー
フォクシー
そのアホが面倒起こしてんの?
リン
リン
ううん、生意気な口利いてるだけ。
フォクシー
フォクシー
だったら黙らせよう。
リンの胸のうちはパニックになったが、なんとか冷静を装う。
リン
リン
やめておこう。
リン
リン
まずは提供者を言わせよう。
リン
リン
それから黙らせる。
ドレイクは心配しながら、周りに倒れている仲間に目をやった。
女たちの方へ向き直ると、すべての感情をなくした。
ドレイク
ドレイク
やってみろよ。
フォクシーがナイフを振り上げる。
フォクシー
フォクシー
やる?
リンはうなづき、女ふたりでドレイクのそばまで寄った。
観念して、ドレイクは守りの姿勢をとって攻撃に備えた。
ドレイク
ドレイク
かかってこい。
フォクシー
フォクシー