諦めない闘い - エピソード 2
by Ava Conway
ブレイドは、本当に私たちを新参の提供者のところに連れて行くと思う?
どうすべき分かっている人間だったら、連れていくはず。
罠かも。
だとしたら、ヤツはあの世行きね。
フォクシーが笑うと、舌ピアスがキラッと光った。
リンは携帯を取り出すし、メールを打ち始める。
そこにいる?
大丈夫なのね、よかった。心配になってきたところ。
ごめん、忙しくて。
地元でラプチャーを売ってる売人のひとりを痛めつけてたところ。
ヤツがライバルのギャングの提供者のところに、私たちを連れてくって。
いい方向に向かってるわね。
願わくば、ホンジュラスの提供者までつながるといいけど。
確かに。この機会を待っていたのよ。感じるの。
そうね。でもヤツらは闘う前から情報を差し出さないはず。
応援要員は必要?
あなたの座標を追跡してるの。
今はいいけど、必要になるかも。成り行き次第ね。
応援が必要になった場合、どれくらいでここに来れる?
今事務所じゃないの。子供がまた病気で。でもチームには必ず待機させるわ。
やだ、病気なの?
託児所って、ご存知のとおり、細菌の培養所だから。
でも大丈夫。息子を毛布でくるんで、漫画を見てる。
目的地に近づいてるわ。私の場所わかった?
見つけた。気を付けて。
うん。
リンは携帯をポケットに滑り込ませる。
フォクシーは車を暗い路地の横で縦列駐車する。
ふたりとも車から降り、路地に近づいていく。
なんか嫌な予感がする。
私も。本当にここで合ってる?
ここがブレイドが言っていた待ち合わせ場所。
信用できる人間じゃないけどね。
全く。隣にフォックスがいてよかったね。
ところで、どうしてその名前が付いたの?
フォックス、狐はずる賢い動物で。
ハンターの目をはぐらかすのが得意。
フォクシーがナイフを取り出す。
そしてルールを守らない。
リンがフォクシーの手に目をやる。
その指輪、落ち着かないわ。
私はつけてるわよ。
自分が誰だか、なぜ安心しすぎちゃいけないか、思い出すことができる。
どういうこと?
私が2歳の時に父親が出て行った。
あと母は...私よりドラッグが大事だった。
そして、ある日突然いなくなったの。
私は子供なりに、自力で生きていくしかなくなった。
大変だったのね―ひどい話。
フォクシーが肩をすくめる。
生きていくためにやるべきことをやったわ。
それから、ある男が現れたの。
信頼するなら、何でもしてくれると約束した。
フォクシーが手を上げる。
しばらくの間は、そのとおりだった。
しばらく?
彼のくれるものには、すべて代償があった。
最終的には、役立たずの両親を全く変わらないと気付いた。
この指輪は、間違った人を信じるとどうなるか、思い出すためにつけているの。
だったらその指輪はとっておくべきね。
なんで?
そんなに大事なものだとは知らなかった。とっておいて。
そうしたら、賭けるものがなくなる。
ナイフをもらうわ。
私の幸運のナイフ?
そう。お別れの心づもりをしておいて。
フォクシーがニコリと笑う。
決まりね。
女たちは路地をのぞき込んで、ブレイドが二人の見知らぬ人と話しているのを見る。
フォクシーはリンを見つめ、彼女のささやく声が夜の闇に消える。
3対2。
お安いご用よね?
フォクシーがうなずく。
やるわよ。
フォクシーとリンが路地に突入し、男たちが驚く。
フォクシーがブレイドを刺し、ブレイドはしゃがれたうめき声をあげながら地面に倒れる。
その間、リンはもうひとりの男の顔を蹴る。
蹴られた勢いで彼の体は回り、数秒間ふらふらとし…
地面に崩れ落ちる。
そして3人目がフォクシーを追い掛ける...
気を付けて!
男はフォクシーに向かって突進する。
リンが、男がフォクシーを捕まえるより先に男にタックルし、地面に倒す。
一体...
どうして。
リンが小声で口早にささやく。
ここで何やってんの?
こっちが聞きたい。
ドレイクは立ち上がり、中途半端に殴り掛かる。
リンは軽々とパンチをよける。
彼はまかせて!
フォクシーはドレイクの背中にキックした。
彼はよろめきながら逃げて行くが、フォクシーが追いかける。
彼女は振り返りながら叫ぶ。
アイツはまかせて。他のヤツをよろしく。
リンはドレイクから目を離せない。
フォクシーが目を細め、リンの後ろを指さす。
突っ立ってないで。ひとり逃げるようとしてる。
リンはギャングのひとり追いかけるが、まだドレイクのことが頭から離れない。
嘘をつかれた!研修中だって言ってたのに。
ドレイクは寝返った?
もっと悪ければ―汚職?
リンは頭の中の考えを追い払い、ドレイクの仲間の最後の男を片付ける。
それから彼女が振り返ると、ドレイクがフォクシーに膝蹴りをしているところ。
フォクシーはナイフを落とし、地面に倒れる。
リンは急いで路地に戻り、フォクシーが負傷をする前にドレイクにタックルした。
彼を片付けて、リン!こっちはブレイドを仕留める。
彼は出血がひどいから、簡単に殺せるわ。
ちょっと待って―ブレイドは殺さないはずよ。
状況が変わったの。
フォクシーは影に向かって急ぐ。
リンはドレイクと取っ組み合いになる。ドレイクがリンを地面に押さえつける。
この嘘つき。最低。
嘘つき?俺を嘘つき呼ばわりするのか?
二人は転がり続け、リンが上になる。
そうよ、裏切り者!
ヤツらから何を持ち掛けられたの?
リンは殴ろうとしたが、ドレイクが大きな拳で受け止める。
一体何を言ってる?
寝返ったのはそっちだろう。俺じゃない。
エージェンシーが人生だって言ったじゃない。
よくこんな裏切りができたわね。
裏切ってない―
よく私を裏切ったわね!
リンは拳を後ろに振り上げ、殴ろうとする。
ドレイクが彼女の指を強く握り、リンは痛みで叫ぶ。
?黙って話を聞けよ。
ドレイクが再度彼女を地面に押し付ける。
聞くわよ―あなたは絶対話さないけど。
今話すところだ。
そうなの?
だったら、どうしてそんなろくでなしになったのか教えてよ。
リンはドレイクから離れ、素早く立ち上がる。
それと、なんで私の人生の邪魔ばかりするの。
邪魔?
助けようとしてるんだ。
リンはドレイクに向かって腕を振るが、彼の顎をぎりぎりでかすめる。
前にも言ったけど―自分の面倒は見れる。
見れないなんて一度も言ってない。
リンがもう一度腕を振り、今度は命中する。
任務の度に子守なんて必要ない。
ドレイクが顎に手をやる。
その自尊心を一分でいいから忘れてくれたら、気付くはず―
フォクシーが影から姿を現す。
そのアホが面倒起こしてんの?
ううん、生意気な口利いてるだけ。
だったら黙らせよう。
リンの胸のうちはパニックになったが、なんとか冷静を装う。
やめておこう。
まずは提供者を言わせよう。
それから黙らせる。
ドレイクは心配しながら、周りに倒れている仲間に目をやった。
女たちの方へ向き直ると、すべての感情をなくした。
やってみろよ。
フォクシーがナイフを振り上げる。
やる?
リンはうなづき、女ふたりでドレイクのそばまで寄った。
観念して、ドレイクは守りの姿勢をとって攻撃に備えた。
かかってこい。
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