キーラン
キーラン
ティア、助けて。
ティア
ティア
え?誰?なんでこの携帯に?
キーラン
キーラン
助けて欲しい。
ティア
ティア
助けろって言われても、誰かも分からないのに。
キーラン
キーラン
ティア
ティア
すみません、どなた?
キーラン
キーラン
キーランだよ。
キーラン
キーラン
ティア。
ティア
ティア
何これ?ブロックしたのに、なんでまだメッセージがくるの?
キーラン
キーラン
ティア、僕だよ、双子の兄。
ティア
ティア
むかつく。やめてくれる?
キーラン
キーラン
僕、大変なんだ。なにもかも、混乱してて。
キーラン
キーラン
でもやっと切り抜けるところ。なんとかやってる。
ティア
ティア
信じられない。誰だろうと、全く冗談にもならないわ。
ティア
ティア
ビョーキだし、残酷だし、もしあなたに少しでも良心があるんだったら、やめてください。今すぐ。
キーラン
キーラン
ティア、ホントに僕だから。
ティア
ティア
いいえ、絶対違います。なぜなら私の兄は亡くなったので。
ティア
ティア
どれだけひどい人なの。
キーラン
キーラン
正確にはわからないけど、わかろうとしている。
2分後。
キーラン
キーラン
ティア?
キーラン
キーラン
バカハムスターちゃんだな。
ティア
ティア
やめて!
ティア
ティア
キーランは誰かにそのあだ名の事を言ったのね。
ティア
ティア
それとも私たちを知ってる人?お互いを呼び合ってるのを聞いたことがあるんでしょう。
ティア
ティア
もっとむかついてきた!
キーラン
キーラン
じゃあ、何かキーランしか知らないことを質問してみてよ。
ティア
ティア
わかった。裏庭の大きな杉の木のふもとに何を埋めたか知ってる?
キーラン
キーラン
引っ掛け問題だな。
キーラン
キーラン
お前が溶かしちゃった、プラスチック製の飛行機を埋めた。
キーラン
キーラン
でも埋めたところは杉の木じゃなくて、樺の木だ。
ティア
ティア
キーラン
キーラン
僕なんだってば。誓って。
ティア
ティア
でも…キーランなの? 私涙で画面が読めない!
ティア
ティア
どこにいるの?なんでもっと早く連絡くれなかったの?
ティア
ティア
警察は…警察は、お兄ちゃんが生きてるはずはないって言ってた。
ティア
ティア
出血が多すぎるって言ってた。
ティア
ティア
キーラン、今どこにいるの?
ティア
ティア
お母さんとお父さんに言わなきゃ!
キーラン
キーラン
だめ!まだだめ。
ティア
ティア
なんでだめなの?
キーラン
キーラン
それは…警察の言ったことは間違ってないんだ、T。
ティア
ティア
何が間違ってないの?
キーラン
キーラン
血の量が多かったことと、それがどういうことか。
ティア
ティア
どういう意味?
キーラン
キーラン
僕、死んだんだ。
キーラン
キーラン
で、死体を探して欲しい。
2分後。
キーラン
キーラン
ティア?
キーラン
キーラン
理解できないかもしれないけど。
ティア
ティア
なにこれ? 電源切ったのに!
ティア
ティア
ほっといて!
キーラン
キーラン
いつまでこうしていられるかわからないよ、T。
キーラン
キーラン
何かに引っ張られてる…
キーラン
キーラン
うまく説明できないんだけど、でも、だんだん…思い出せなくなってる。
キーラン
キーラン
自分が誰だか。いや、そういうことじゃないな。
キーラン
キーラン
難しいのは…なんだろう、 はっきり考えること。
キーラン
キーラン
思考が働かなくなってる感じで、ただ感情だけがある。
ティア
ティア
これどうなってるの?なんでやってるの?
キーラン
キーラン
T、真実って感じ取れることができるだろう?
キーラン
キーラン
双子だって証明、もっと必要?
キーラン
キーラン
OK、お前は頭がいい。少なくとも数学と科学は僕と同じくらい。
キーラン
キーラン
生きてた時の僕と同じくらい。
キーラン
キーラン
でもお前はいつもニコニコしてるような女の子でいたくて、本当の自分を隠してた。
キーラン
キーラン
これで、ふたつ証明できる。
キーラン
キーラン
ひとつは、僕がお前のことを知ってるってことがわかる。
キーラン
キーラン
ふたつ目は、お前は頭がいいから気付くはず
キーラン
キーラン
バッテリーが抜かれて机にしまわれた携帯は機能しない。
ティア
ティア
なんで知ってるの。
キーラン
キーラン
今、隠しカメラがあるか見回している。
キーラン
キーラン
今、走っている。
キーラン
キーラン
ちくしょう、お前がそんなに怖がってる姿は見たくない。
キーラン
キーラン
どこに行くつもり?
キーラン
キーラン
外に出たんだね。それでいいよ。
キーラン
キーラン
例の古い樺の木に向かってる。
キーラン
キーラン
やばいくらい高い所まで登って、お互いびびらせあったの覚えてる?
キーラン
キーラン
それと、枝から樹皮をはがして要塞を、お前の、
キーラン
キーラン
いや、双子の会話は隠す必要ないか。僕たちの人形用の要塞をつくった。
キーラン
キーラン
こういうことを考えている時は、大丈夫なんだ。
キーラン
キーラン
お前としゃべって、昔のことを思い出してる時は、自分のままなんだ。
キーラン
キーラン
でも、ティア、それ以外の時は…怒り狂ってる。で、自分をコントロールできない感じ。
キーラン
キーラン
自分の内側に暗闇があるみたいで、
キーラン
キーラン
それが広がって、周りの暗闇を探してて、
キーラン
キーラン
どこから始まったのかはわからない。
キーラン
キーラン
それがひどくなるような気がして、僕自身が溶けてその暗闇に飲み込まれるような感じ。
キーラン
キーラン
でもそうはなりたくない。
キーラン
キーラン
頼む。
キーラン
キーラン
お前なら助けられると思う。
ティアは樺の木に寄りかかる。
寄りかかった木の強さに支えられているかのように。
彼女は震えながら3回深く息を吸い、電話を持ち上げる。
ティア
ティア
キーラン?
キーラン
キーラン
僕だよ。誓う。
ティア
ティア
どこにいる?
キーラン
キーラン
お前のそばにいる。ちょうど後に、というか、少なくとも魂の一部は。
ティア
ティア
いつも?
キーラン
キーラン
いや、動くことができる。
キーラン
キーラン
例えば、この前の夜お前とスコッティ・ケイドがトリの家の2階に上がっていっただろ?
キーラン
キーラン
大丈夫、さっさと移動したから。
キーラン
キーラン
兄が見ない方がいいこともある。
ティア
ティア
うそ。超恥ずかしい。
キーラン
キーラン
一緒にいられるほうが恥ずかしいだろう。
ティア
ティア
どこに行くの?私のとこにいないときは。
キーラン
キーラン
ただ浮いてる、ときもある。
キーラン
キーラン
本当に大事な人のそばにしかいられない気がする。
キーラン
キーラン
人だけじゃないな。お前と母さんと父さんと、ウェブスターもだから。
ティア
ティア
猫にも取り付くの?
ティア
ティア
取り付く、表現がおかしいかな。
キーラン
キーラン
どうだろう、こういう状況用のマニュアルはないから。
ティア
ティア
まだ、悪ふざけなのか、判断できない。私、
ティア
ティア
おかしくなりそう。
キーラン
キーラン
まだ泣いてるんだ。
キーラン
キーラン
ウェブスターの話した時は少し笑ってたけど。
キーラン
キーラン
でも笑ってても、泣いてる。
キーラン
キーラン
今汚くなってるよ、鼻水たらして。
ティアは少し笑って、シャツの袖で顔を拭こうとする。
ティア
ティア
キーラン、本当に寂しかったよ。ホントに辛かった。
キーラン
キーラン
知ってる。見てた。
キーラン
キーラン
それが僕にはつらかった―お前が混乱しているのに何もできなくて。
キーラン
キーラン
全部僕のせいなのに。
ティア
ティア
違う!何が起きたにしろ、お兄ちゃんのせいじゃない。
キーラン
キーラン
確かに。他の誰かのせいだ。
キーラン
キーラン
で、そいつに思い知らせるから、助けて欲しい。
キーラン
キーラン