キャサリン
キャサリン
パパ?パパなの?
人形は目から涙を流した。
キャサリンが抱いていた恐れは消え去った。
キャサリン
キャサリン
パパ!あなたなのね!
キャサリン
キャサリン
なんてこと。信じられない。
キャサリン
キャサリン
何があったの?
キャサリン
キャサリン
聞きたいことがたくさんあるわ。
キャサリン
キャサリン
この本を使って話すには時間がいくらあっても足りない・・・
人形は涙を乾かすのに、瞬きをした。
キャサリン
キャサリン
それよ!
キャサリン
キャサリン
私が質問するわ。瞬き一回が「はい」、二回が「いいえ」にするってどうかしら?
人形は瞬きを一回して、それに同意した。
キャサリン
キャサリン
オッケー、ええっと・・・最初に何から聞こうかしら・・・
キャサリン
キャサリン
どうしてこんなことができるの?
人形はぼーっとキャサリンを見つめた。
キャサリン
キャサリン
ああ、ごめん。そうね。「はい」と「いいえ」で答える質問だけよね。
キャサリン
キャサリン
オッケー。考えさせて。
キャサリン
キャサリン
ははは、これ異常だわ。
キャサリン
キャサリン
わかったわ、準備はいい?痛みを感じてる?
二回瞬き、「いいえ」。
キャサリン
キャサリン
良かった。
キャサリン
キャサリン
あなたは今も・・・生きてるの?つまり、生きてるんじゃなくて、まだ、ここにいる・・なにか不思議な方法で?
人形は一回瞬きをした。
キャサリンは心からほっとし、同時に困惑した。
キャサリン
キャサリン
あなたは事故で死んだの?
二回瞬き。
キャサリン
キャサリン
でも町のみんなが、あなたの車を見たわ。
キャサリン
キャサリン
車は・・・ひどかった。
キャサリン
キャサリン
わたしたちはみんなでお葬式に行ったわ。
キャサリンは頭の中でどんどん質問が巡って、頭痛を感じ始めた。
彼女は気を鎮めようと、ベッドに腰を掛けた。
キャサリン
キャサリン
何か別の事故に遭ったの?
二回瞬き。
キャサリン
キャサリン
誰かが・・・あなたをこんな風にしたの?
一回瞬き。
キャサリンは涙が湧き出てくるのを感じた。
キャサリン
キャサリン
理解できないわ。
キャサリン
キャサリン
誰が人を人形にできるっていうの?
キャサリン
キャサリン
それに何のために?
キャサリン
キャサリン
町のみんながあなたを愛していたわ。
人形はぼんやりとキャサリンを見つめている。
キャサリン
キャサリン
そうね・・・時間があるうちに質問し続けたほうが良いわよね。何が起きたかについて?
人形は一回瞬きをした。
キャサリン
キャサリン
ええっと、じゃあ、あなたをこうしたのは町の外の人?見ず知らずの人?
二回瞬き。
キャサリン
キャサリン
なんてこと!?知り合いの誰かなの?
一回瞬き。
キャサリン
キャサリン
誰なの?
キャサリン
キャサリン
それは私も知っている人?
足が床を踏む音が家の中に響いた。少しして、キャサリンはアグネスおばさんと母親がドアの外で息をしているのが聞こえた。
キャサリンは慌てて、人形の中に閉じ込められた父親に囁いた。
キャサリン
キャサリン
ママとアグネスおばさんがここにいるわ。
キャサリン
キャサリン
二人はあなたのことを危険だと思ってる。
キャサリン
キャサリン
でもこれは良いことよ。あなたを狙うのはやめるように言うわね。
キャサリン
キャサリン
パパが生きてるって知ったらママも安心するわ。
人形は必死に瞬きをした。
キャサリン
キャサリン
どうゆう意味?
キャサリン
キャサリン
二人に会いたい?
二回瞬き。
キャサリン
キャサリン
でも・・・
キャサリンは息を飲んだ。
キャサリン
キャサリン
アグネスおばさんを恐れているの?
一回瞬き。
キャサリンはベッドから飛び上がり、叫んだ・・・
キャサリン
キャサリン
わかってたわ!
キャサリン
キャサリン
アグネスおばさんってなんか怪しいっていつも思ってたの!
キャサリン
キャサリン
おばさんのつけてるアクセサリーとか・・・
キャサリン
キャサリン
それにパパとおばさんは折が合わなかった。
キャサリン
キャサリン
おばさんはいつも家族の男の人みんなの悪口を言ってたし、それは彼女が冷たい人だから・・・
キャサリン
キャサリン
でも彼女が本当の悪魔のような人だとは思ってなかったわ。
人形はまた必死に瞬きをしたが、キャサリンは寝室のドアをノックする音に気を取られた。
アグネス
アグネス
キャサリン、ドアを壊す前にもう一度あなたにチャンスをあげるわ。
キャサリン
キャサリン
やばい!
キャサリン
キャサリン
またおばさんにあなたを傷つけさせたりしないんだから。
そう言って、キャサリンは人形をつかみ、寝室の窓から滑り降りた。
キャサリンは寝室の窓の外の茂みの中に身をかがめると、大きな破壊音が聞こえた。
母親とアグネスおばさんがドアを壊して、寝室へと入ってきたのだ。
彼女は石のように固まって座り、二人の会話を聞いていた。
ママ
ママ
部屋に誰もいない!
ママ
ママ
キャサリンはどこに行ったの?
アグネス
アグネス
彼女はきっと人形を連れてこっそり逃げたに違いないわ。
アグネス
アグネス
どうしてこんなことに、マリー?
アグネス
アグネス
これは私たちにとってとても危険だわ。
ママ
ママ
私たちはまだ大丈夫よ。
ママ
ママ
あの人形が自分の父親だなんて、キャサリンが知る由ないわ。数年前に死んだんだもの。
アグネス
アグネス
どうしてそう単純なの。まだ気がついてないとしても、今彼女と人形は二人きりよ。
アグネス
アグネス
どうにかしてコミュニケーションをとって、絶対にキャサリンにわかってしまうわ。
アグネス
アグネス
彼がキャサリンにどんな嘘をつくかわからないでしょ?
ママ
ママ
心配はよしましょう。
アグネス
アグネス
マリー、どうしてこんなことになったのかしら。あなたが何か間違えたに違いないわ。
アグネス
アグネス
彼は動けないはずだったのに。
ママ
ママ
もし私が失敗してたとしたら、それはあなたの失敗でもあるわ。
ママ
ママ
あなたが教えたんだから・・・
アグネス
アグネス
ああ、私たちを見て!未だに私たちは彼のことで喧嘩してる。
アグネス
アグネス
あなたがあんなひどい男と結婚しなきゃ良かったのに。
アグネス
アグネス
彼は自分自身のために、何でも知りたがりなのよ。
ママ
ママ
ほんとそうよね。
ママ
ママ
キャサリンにも、その知りたがりの性格が遺伝したんだと思うわ。
アグネス
アグネス
きっとそうね。でもキャサリンもそろそろ学ばなければならない時ね。その年になったわ。
ママ
ママ
ええ。彼女にちゃんと正しく教えなければ。
ママ
ママ
彼女にはポテンシャルがあるわ。
ママ
ママ
賢くて機転が利くの。
ママ
ママ
きっとなにか偉大なことを為すわ。
アグネス
アグネス
とても利口だわ、確かに。
アグネス
アグネス
キャサリンは賢いから、自分が魔女だってことをわかり始めていると思う?
キャサリンは窓に身を近づけて、もっとよく聞こえるよう神経を集中させた。
彼女が体重を移動させたことで、足の下にあった小枝が折れた。
ママ
ママ
窓の外に誰かいるわ!
二人は窓へと走り寄ると、キャサリンが手に人形を握りしめながら、森の中へと走っていくのが見えた。
アグネス
アグネス
彼女を止めて!
ママ
ママ
幸いにもここに一つ持ってるわ・・・
キャサリンの母親は小走りに寝室の隅へと行き、床板の剥がれた部分を押し上げた。
彼女は埃まみれの古い学術本を引っ張り出し、もろくなっているページを剥がして、開いたページにリボンのしおりをゆるやかにかけた。
ママ
ママ
効果があるはずよ。
キャサリンの母親は窓のそばへと戻り、キャサリンの方向に呪文を唱えた。呪文は庭じゅうに響き渡った。
キャサリンの足は途端に板のように固まった。しかし弾みで上半身が前方倒れ、顔から泥に転んだ。
キャサリン
キャサリン