ティア
ティア
キーラン、何があったの?誰がやったの?
キーラン
キーラン
あまり思い出せないんだ。最後のあたりが。
キーラン
キーラン
おじいちゃんのハーリーのところにいたのはわかるんだけど、なんとなくぼんやりしてて。
ティア
ティア
ハーリーおじいちゃん?おじいちゃんが刑務所に入ってからは全然会ってないじゃない!
ティア
ティア
10年前から。
キーラン
キーラン
お前は会ってないけど、僕は数ヵ月前にばったり会ったんだ。
キーラン
キーラン
同じところでガソリン入れてたんだ。それから会話が始まって。
キーラン
キーラン
多分、興味本位で。
キーラン
キーラン
母さんは絶対おじいちゃんのこと話さないだろ。
ティア
ティア
話さないのは、それなりの理由があるからだと思わなかったの?
キーラン
キーラン
うん。理由が知りたかったこともある。
ティア
ティア
泥棒で麻薬の売人で刑務所に入れられたってだけでも理由として十分じゃない?
キーラン
キーラン
多分違うと思う。
ティア
ティア
で、何がわかったの?
キーラン
キーラン
T、おじいちゃんは悪い奴じゃないよ。
キーラン
キーラン
確かに愛想はないけど、でも刑務所から出て何年もたってるんだ。
キーラン
キーラン
車修理の事業を自分でやってて、あと奥さんもすごくいい人。
キーラン
キーラン
奥さんはすごくはまってて、なんていうんだっけ、来世とか。
ティア
ティア
奥さん?ハーリーおじいちゃんが結婚してるの?
ティア
ティア
で、一緒に過ごしたわけ?
ティア
ティア
お兄ちゃんは、なんかおかしかったし、隠してることがあるだろうとは思ってたけど…
ティア
ティア
もっといいことだと思ってた。ゲイだとか。
ティア
ティア
おじいちゃんと一緒にいるなんて、ただ気持ち悪いだけよ!
キーラン
キーラン
いい人だよ。
キーラン
キーラン
人生を立て直すために、一生懸命働いているんだ。
ティア
ティア
なんで今まで教えてくれなかったの?
ティア
ティア
私が関心を持たないと思ったの?
キーラン
キーラン
関心を持つかもしれないけど、母さんや父さんに言うかと思った。
キーラン
キーラン
お前はルールを破らないから。リスクをとらないだろう。
ティア
ティア
お兄ちゃんはすぐルールを破るから、それでこんなことになったのよ!
ティア
ティア
ごめんなさい、今のは―
キーラン
キーラン
ホントのこと?つまり、死んだのは、僕がルールを破ったから。確かにそうだよ。
キーラン
キーラン
おいティア、泣くのやめろよ。頼むから。お前もときには正しいって、やっと認めてやったんだから。
キーラン
キーラン
お祝いしないと!
ティア
ティア
ただ信じられなくて。ううん、私たち集中しないと。お兄ちゃんが大変で、私が助ける必要がある。
ティアは樺の木からは離れ、家に向かう。
彼女は空いた手で何度も涙をぬぐう。
キーラン
キーラン
ティア!どこに行くの?
ティア
ティア
どこだと思う?
ティア
ティア
もしそこが、お兄ちゃんが最後にいたと覚えている場所なら、
ティア
ティア
私がそこに行って、何が起きてるのか確認するわ!
キーラン
キーラン
やめとけ!バカな真似はするな。
キーラン
キーラン
もしそこで僕にまずいことが起きたんなら、
キーラン
キーラン
お前は絶対そこには行くべきじゃない。
ティア
ティア
おじいちゃんたちと一緒に過ごしてたって言ったじゃない!
ティア
ティア
何が起きたか知るつもりなら、どこかから始めないと。
キーラン
キーラン
ティア、やめろ!
ティアの携帯の画面がパッと光り、それから端から端までひびが入る。
彼女は驚いて手から落とす。
ティアは携帯を拾い、しばらく見つめる…
それからまた入力し始める。
ティア
ティア
お兄ちゃんなの?今私の携帯割った?
キーラン
キーラン
ティア
ティア
キーラン?大丈夫?
キーラン
キーラン
さっきも書いたけど、自分自身でいるのが難しい。
キーラン
キーラン
落ち着いたままで、じっくる考えることが。
キーラン
キーラン
ごめん。やるつもりじゃなかったんだ。
ティア
ティア
何かすることができるの?
ティア
ティア
メッセージ送信以外に。
キーラン
キーラン
わからない。できるのかな?
キーラン
キーラン
今までやったことなかったけど。
キーラン
キーラン
今のだって、やるつもりなかった。
ティア
ティア
へー、すごいね。他に何できる?
キーラン
キーラン
僕の注意をそらそうとしてる?
キーラン
キーラン
お前が家に入って鍵を探してるのに気づかないと思った?
ティア
ティア
助けが必要なんでしょ。
ティア
ティア
助けようとしてるの。それだけよ。
ティア
ティア
注意がそれたかどうか知らないけど、ハーリーおじいちゃんのところに行くわ。
キーラン
キーラン
ティア、頼むからやめて。
ティア
ティア
他にいい考えがある?
キーラン
キーラン
奥さんだ!オーロラのほうが安全だし、携帯の番号知ってる。
キーラン
キーラン
ただメッセージ送って、どうなるか見てみよう。奥さんが何を知っているか。
ティア
ティア
OK、最初の一歩ね、とりあえず。
ティア
ティア
さり気なく、奥さんが知ってることを確認する。
ティア
ティア
奥さん、何かバラすかも。
キーラン
キーラン
奥さんは関係ないよ、T。敵じゃない。
ティア
ティア
なんでそう言えるの?
ティア
ティア
何も覚えてないっていったじゃない。
ティア
ティア
すべて奥さんの家で起きたことなら、絶対奥さんも関わっているはず。
ティア
ティア
電話番号は?
キーラン
キーラン
お前の電話に登録したよ。名前はオーロラ・ハーリー。
ティア
ティア
すっかり慣れたわね。幽霊でいることに。
ティア
ティア
やだな、キーランに、そんなことに慣れて欲しくない。
ティア
ティア
悪ふざけが上手でいてくれるほうが本当に、本当に、いい。
ティア
ティア
で、ドアを開けて中に入ってきて、私のことを笑うの。
ティア
ティア
私はお兄ちゃんのことぼこぼこに殴って、何か月も何年もずっと怒り続けて。
ティア
ティア
で、お兄ちゃんはここにいて。
ティア
ティア
元気で。
キーラン
キーラン
そうだね。僕もそうしたいけど、でも無理だよ、T。
ティアは震えながら深呼吸すると、メッセージを入力する画面を開く。
入力を始める。
ティア
ティア
こんにちは。突然すみませんが、私、キーランの妹のティアです。
ティア
ティア
今大丈夫ですか?
オーロラ
オーロラ
あらティア、連絡くれるなんて嬉しいわ。
オーロラ
オーロラ
あと、今回のことは、残念だったわ。
ティア
ティア
残念?キーランは行方不明なだけです。
ティア
ティア
家出か何かのつもりでしょう。すぐ戻ってきます。
オーロラ
オーロラ
あぁ、ごめんなさい。でもそれは間違ってると思うわ。
ティアが電話をポケットに押し込む。
そして大きな声で自分に言う。
ティア
ティア
間違ってると思うですって?
ティア
ティア
一体どうしてそんな考えが浮かぶの?
彼女はドアに向かう。
ティア
ティア
すぐにはっきりさせる。
彼女は車に乗り込み、悲しみは決意に変わった。
ティア
ティア